【質問】副業を始めたら開業届を提出する?しない?【回答】雑所得なら不要です

「副業を始めたら開業届の提出が必要って聞いたけど本当?」

 

「提出は不要だけど、副業でも提出したほうが得っていう意見もあるみたい。本当?」

ゆるり会計士@海外在住

今回はそんな疑問を持つ方のために、開業届の提出のが必要かどうかを解説します。

私は公認会計士で、現在は海外在住ですが、日本と海外で10年以上税務業務をクライアントに提供してきました。

結論から言うと...
  • 開業届の提出の必要性は、あなたの所得の種類によって異なります。
  • 継続して副業を行い、事業所得に該当するなら、開業届の提出が必要になります。
  • 逆に雑所得に該当するなら、開業届の提出は不要ですし、提出するメリットもなしです。

なので、どういう場合にあなたの副業の所得が事業所得に該当するかが重要です。以下で解説します。

イメージとしては、副業でも自分の力で継続・反復して収入を得るなら開業届の提出が必要になります。

税金面では、事業所得(=開業届を提出する場合)のほうが有利です。その点も頭に入れて以下の記事を読んでください。

ゆるり会計士@海外在住

本記事で、開業届の提出の要否とその後の所得税の関係をよく理解して、不安を解消しておきましょう。

副業における開業届提出の要/不要

開業届とは?

まず開業届とは何かですが、開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届書」です。

 

個人が事業を開始したときのほか、事務所・事業所の新設や増設、移転や事業の廃止を行った際に、納税地(住所や事業を行う場所)の税務署へ提出する書類です。

税務署の所在地は、国税庁のサイトでも調べられます。

開業届を提出しなければならない場合

続いて、どのような場合に開業届を提出する必要があるのかをもう少し詳しく説明します。

国税庁のサイト “[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続”を見ると、以下の場合は開業届の提出が必要とあります。

[手続対象者]

新たに事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業の開始等をした方

つまり、事業所得不動産所得を得ることになった方は、開業届の提出が必要です。

お給料をもらう本業があって、それに加えて副業を始めたという場合でも、自分で事業を始めたら、開業届の提出が必要になります。

なお不動産所得というのは、不動産の賃貸から得る所得です。

 

不動産所得かどうかの判断は難しくないので、以下では不動産所得は除外して話を進めます。

開業届を提出しなくてよい場合

他方、雑所得給与所得など、その他のカテゴリーの所得の場合は、開業届の提出は必要ありません

 

ゆるり会計士@海外在住

以上のとおり、自分の所得が事業所得であれば開業届を提出、雑所得であれば提出不要と分かりました。

ただ、自分の副業の所得が事業所得雑所得かの線引きは難しいので、その判断が必要になります。

開業届の要/不要の判断【事業所得と雑所得の判定基準】

では事業所得と雑所得の違いは何でしょうか。

先にポイントを述べます。

ゆるり会計士@海外在住

事業所得に該当するためには、一定の継続性営利性があり、社会的地位を伴うことが必要です。

たとえばクラウドソーシングを通じてライティングやWeb制作の仕事を受注した場合、1回きりの受注では事業所得とは認められないでしょう。

事業所得として認められるためには、

  • 継続して受注活動を行う
  • 反復して仕事をして収益もあがる
  • 客観的にもWeb制作の仕事をしていると認められる状態である

こうしたことが、必要になります。

 

もう少し詳しく見ていくと、国税庁のタックスアンサー「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」「No.1500 雑所得」によると、事業所得雑所得の定義は以下のとおりです。

事業所得

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。

雑所得

雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。

これに加えて、過去の最高裁判決(最判昭和56年4月24日)で、事業所得とは以下のような所得だとされ、現在もこの考え方が踏襲されています。

所得税法27条1項に規定する事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいうものと解される。

話が少し難しくなりましたが、何となく感覚は伝わったのではないかと思います。

ゆるり会計士@海外在住

ある程度収益が継続して発生するか、それに近い状況にならないと、副業の所得は事業所得として認められません。

したがって、そのように収益が継続して発生する状況になってきたら、開業届の提出を考えましょう。

ちなみに、そもそも年間20万円までの雑所得であれば確定申告は不要となっています。

 

そのレベルの所得であれば、開業届の提出は不要です。

なお、「所得」というのは「収益ー経費」であり、経費を引いた後の金額になります。

なので、収益が20万円を超えたら確定申告が必要とは限りません。

「収益ー経費」という考え方は、事業所得の場合でも、雑所得の場合でも大きな違いはありません。

 

「副業始めたらとりあえず開業届を出した方が得」はウソです

「副業がまだ事業所得のレベルに達していない場合でも、損にならないから開業届を提出しておくとよい」という意見もあるみたい。提出したほうがいいですか?

自分で事業所得のレベルに達していないという認識なのであれば、提出は不要です。

 

理由①: 「開業届を提出⇒事業所得」ではない

事業所得で申告することのメリットの観点から、副業をする方に開業届の提出を勧める人もいるようです。

でも上で見たとおり、開業届の提出は「事業を行っている⇒事業所得が発生する⇒開業届を提出しなければならない」という流れで決まるものです。

 

事業を行っているとは言えない状況なのに、開業届を提出すれば事業所得として認められるものではありません。

確定申告をした後でトラブルになりかねないので、まずは事業を行っていると言えるような状況になってから開業届を提出しましょう。

理由②: 事業所得で確定申告すると決めた後に提出してもOK

開業届は、事業の開始の事実があった日から1月以内に提出することとされています(国税庁サイト)。

しかし実際は、1ヶ月を過ぎても罰則が科されることはないので、厳密にこだわる必要はありません。

それに、開業日前に発生した費用も「開業費」に計上して償却すれば経費にできます。

 

つまり、開業日が後ろにズレても、特に損はありません。

どういうことかと言うと、たとえばWeb制作を副業にしている方だと、稼げるようになる前にスクールなどの学習費用が発生していると思います。

スクールに払った費用は、稼ぐ前に発生したからと言って、経費として使えないわけではありません。

 

稼げるようになってから開業届を出せば、スクールの費用も「開業費」に計上できるので、確定申告では経費にできます。

なので、副業を始めてすぐに慌てて開業届を提出しなくても、後でタイミングを見て提出すれば間に合うのです。

開業費について、詳しくは以下の記事をご参照ください。

>>【知らないと損する】開業費の償却と仕訳 | 個人事業主の節税の必須アイテム

注意点

ただし、確定申告は年単位なので、年末近くに事業所得として申告すべき状況になってきたら、即対応が必要です。

 

その年の副業の所得を申告しないと、申告もれになってしまうからです。

 

この場合は、その年の特定の日を開業日として、開業届と青色申告承認申請書を提出するようにしましょう。

理由③: 副業所得が20万円以下なら所得税は申告不要

上記の通り、副業の雑所得が20万円以内であれば、確定申告は不要です。

つまり、副業の所得が20万円を超えない場合は、所得税を課せられないということです。

65万円の青色申告特別控除のメリットを受ける必要がないので、あえて開業届と青色申告承認申請書を提出する意味がないことになります。

副業所得が20万円以下の場合、所得税は申告不要ですが、住民税の申告は必要になるので気をつけてください。

 

この場合、自分が住民票を提出している地方自治体に直接相談して申告を行うのが、一番簡単です。

理由④: 開業届の提出は手間

開業届をあえて提出するのは、税金面でのメリットを追求するためでもあります。

そうすると、65万円の青色申告特別控除のメリットを得るためにも、青色申告承認申請書の提出が必要になります。

ゆるり会計士@海外在住

これら書類の提出は簡単とも言われますが、実際は手間がかかります。

詳細は、以下の記事を読んで頂くとよく分かります。

>> 開業届の書き方

>> 青色申告承認申請書の書き方

なので、提出が不要な段階でわざわざ提出するのは、特段メリットもないですし、お勧めできません。

ただし、開業届の作成ソフトを使うのであれば、開業届・青色申告承認申請書とも無料で簡単に作成・提出できるのも事実です。

開業届の作成ソフトで有名なのは開業freeeですので、無料で試しに使ってみるとよいでしょう。

副業で開業届を提出するメリットとデメリット

メリット | 青色申告承認申請書とセットで提出

今までの説明からも分かる通り、開業届を提出するかどうかは、自分で恣意的に決めるものではありません。

提出する必要があれば、提出するというのが本来の考え方になります。

ゆるり会計士@海外在住

とはいえ開業届を提出するメリットを知っておくのはよいことなので、以下に主なものを3つ挙げました。

開業届を提出する主なメリットは、以下のようなものがあります。

  • 一緒に青色申告承認申請書を提出することにより、65万円の特別控除など青色申告のメリットを享受できる。
  • 個人事業主としての銀行口座の開設が可能になる。
  • 個人事業主としての自覚が芽生える。

なので、自分が開業届を提出すべき状況なのであれば、提出すべきです。

青色申告のメリットの詳細については、以下の記事を参照ください。

>> 【副業の税金】事業所得と雑所得のちがい  / 副業が事業所得になれば、青色申告が可能

デメリット2点

開業届を提出するメリットとは逆に、提出することによるデメリットもあるのでしょうか?

本来はデメリットはないのですが、注意したほうがいい点もあるので、以下の2点は知っておきましょう。

失業保険をもらえなくなる可能性

副業の開業届を提出した後に、本業の会社を辞めることになったらどうでしょう?

この場合、開業届を出して事業を行っていると、原則として失業保険をもらえません。

というのも、失業保険の受給要件は、失業していて再就職の意思を持っていること。

 

開業届を出して事業を行っていると、受給要件を満たしません。

他方で、失業した後に、開業届を出して事業を開始したという状況であれば、一定の待機期間が経過した後に事業を開始したことを条件に、失業手当を受給することができます。

このあたりは、実際のご自身の状況に応じて、ご自分で調べたり、事前にハローワークに相談することをお勧めします。

ゆるり会計士@海外在住

いずれにしても、本業の会社を近いうちに退社する可能性がある方は、開業届を出すタイミングに注意です。

会社に副業がバレる可能性

副業が禁止されている会社に勤務している方のみならず、副業が容認されていても、会社には告げずに副業をしている方もいると思います。

この点、開業届の提出自体では、会社に副業がバレることはないので安心してください。

副業がバレる可能性があるのは、副業による所得で住民税が発生し、その源泉徴収のための通知が役所から会社に行く場合です。

これは将来の話ですが、基本的には確定申告書の中で住民税の特別徴収を受けない旨の選択をしておけば、会社には連絡が行かないことになります。

この辺りはネットに多くの解説記事があるので、調べてみましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

副業を始めたら開業届の提出が必要かというと、雑所得の場合は不要かつメリットなしとご理解頂けたと思います。

もし副業の所得が年間20万円を超え、かつ反復性・継続性などの事業所得の条件を満たせるようになったら、開業届を提出しましょう。

 

このときは、青色申告特別控除のメリットを得るために、青色申告承認申請書も同時に提出します。

これらの書類の作成・提出は結構手間がかかります。

会計ソフトで有名なfreeeの開業届作成ソフトを使うと、青色申告承認申請書も同時に作成できて、効率的です。

>> 公式開業freee

開業freeeの使い方やメリットは、以下の記事で詳しく説明しているので、ご参照ください。

開業freeeなら無料で開業届を簡単に作成!使わないと損する理由3つ